眼科手術器具の開発
手術器具の開発
我々は、 “眼科手術をもっとスマートに!”をコンセプトに,Smart-Instrument Series の一環として販売する以 下の 3 種類手術道具を開発した。
Smart-Spec 開瞼器
Smart-Drape アイドレープ
Smart-Ring 瞳孔拡張器
従来の開瞼器の問題点
従来の開瞼器のまぶたへの設置
- 従来の開瞼器では、バネやスライド構造がアームに対して平行についており、まぶた引っかけ部がまぶたと平 行に開閉する。
- そのため開瞼器を閉じた時にも左右の引っかけ部の間隔が広く、まぶたへの設置には、器具を傾けたり、左手 でまぶたを開く必要がある。奥目の症例ではその設置が特に難しかった。
従来の開瞼器設置時の眼瞼の解剖
- 従来の開瞼器は、大きく開いた時に眼瞼を強く持ち上げて痛みを誘発したり、眼瞼の組織(特に挙筋腱膜)を 傷めて術後の眼瞼下垂の原因になったりすることがある。
- 奥目の症例では、器具操作が難しく水が溜まりやすいが、眼瞼が持ち上がると奥目が増強して手術が更に難 しくなる。また、水溜りが起こりやすくなり、吸引孔付き開瞼器や排水器を使用しても十分な排水効果が得ら れないこともある。
MIRAI EYE の開瞼器による解決策
Smart-Spec の開閉
- Smart-Spec は、バネ部がアームに対して垂直についていることを特徴とする。アームのヒンジグリップを閉じ た時にアームが折りたたまれて、左右の眼瞼鈎部の間隔が狭まる。
- そして、開いた時に眼瞼鈎部が眼瞼や眼球の 構造に沿うように斜め下方向に開く。
Smart-Spec のまぶたへの設置
- Smart-Spec の眼瞼への設置は、器具を閉じて上下の眼瞼の間に開瞼鈎部を挿入し器具を開くだけ。 どんな形の目であっても容易に片手で眼瞼に設置する事ができる。
- 器具を閉じて上下のまぶたの間に引っかけ部を挿入し器具を開くだけ
- 排水シート付 Smart-Spec は、Smart-Spec に排水装置が付属しているものである。 単独の Smart-Spec 開瞼器と同様の操作で、迅速かつ簡単に開瞼器と排水シートを同時 にまぶたに設置できる。
Smart-Spec 設置時の眼瞼の解剖
- Smart-Spec は、挿入や抜去の方向が結膜嚢や眼瞼のカーブに沿って いる。 また、開瞼鈎部は眼球や眼瞼の形状に沿う3D曲線をもっている。 そのため眼瞼を強く持ち上げることがなく、眼瞼組織(特に挙筋腱 膜)を傷めて術後に眼瞼下垂を誘発するリスクや、奥目を増強させて手 術を更に難しくするリスクが少ない。
実験装置を使った排水効果の検証
- この排水シートは、2 層の特殊溝加工シートを持ち、強い毛細菅現象やサイホン効果を示して強力に水を吸い 上げ排液する。当社の実験では下図に示すように従来の排水器の排水能力を凌駕していた。
- また、排水シート付 Smart-Spec は、吸引孔付き開瞼器のように、吸引ポンプに接続する必要もなく、加齢で 緩んだ結膜を吸引して排水効果が減少したりする事もない。
- さらに、このシートは扁平で薄く、器具操作の妨げにならないばかりか、幅が広いため耳側の露出した皮膚や まつげをカバーするドレープの役目も果たす。
従来のアイドレープの問題点
- 世界的な高齢化と医療技術の進歩により、白内障手術や硝子体注射が激増しており、日本と米国だけで 1,400 万人がそれらの手術を受けている。
- これらの世界で一般化した眼科手術において、まず念頭におかなければならないのは合併症のない安全な手術 である。そのために、極めて重要なのが的確なドレーピングと効果的な排水である。
- 的確なドレーピングは、術野へのまつげや皮膚の露出を防ぎ、そこに常在する菌が手術器具を通して眼内に もちこまれる事を防止して術後眼内炎発症のリスクを下げる。MRSA などの薬剤耐性菌が増えた現在、失明の恐 れもある術後細菌性眼内炎の防止は、眼科医療関係者にとって克服すべき大きな課題である。
- <効果的な排水は、術野の視認性を向上させて術中合併症発生のリスクを減少させると共に、溜った水の中に 存在する菌を眼外に排出して術後眼内炎のリスクを減少させる。
一般のアイドレープと競合製品
- 従来ドレーピングの方法として、フィルム状ドレープを使う方法や、まぶたを引っかける部分が広い使い捨 て開瞼器が使用されている。しかしこれらの方法では、まぶたの耳側や鼻側の部分はカバーされず露出したまま であった。また、まぶたを全周カバーする使い捨てのドレープ付き開瞼器が開発されたが、水が溜まり易かった ため普及しなかった。
手術中に排水を行う一般の開瞼器や排水器
- 従来、術野からの排水を行うものとして、開瞼器に水を吸引するポンプ機能を付けた吸引孔付き開瞼器や、耳 側のまぶたに引っかけて毛細管現象などを利用して排水する排水器が使用されている。しかし、これらは、高価
- だったり、奥目が強い症例や結膜が緩んでいる症例では十分な排水機能を発揮できないという欠点があった。
MIRAI EYE のアイドレープによる解決策
Smart- Drape
- Smart-Drape は、厚み 0.1 ㎜の薄いシリコーン 膜と外枠でできており、まぶたや眼球の形態に
- フィットする 3 次元構造で、中央にまぶたの下 にさし込む陥凹部と、耳側に排水構造をもっている。
- 陥凹部は垂直方向の2つのポケットをもってお り、ここに Simple-Spec のまぶた引っかけ部を閉 じた状態でさし込み両者を固定して使用する。
- Smart- Drape の第 1 の特徴は Smart-Spec 開瞼器を使用して簡単かつ迅速に 眼瞼に設置 できる事である。
- Smart- Drape の第 2 の特徴は、眼瞼の皮膚と睫毛を全周のわたって確実にカバーできる事である。
- Smart-Spec の第 3 の特徴は、耳側に排水構造が設けられていることである。
Smart-Drape の眼瞼への設置
-
下図に、Smart-Drape を白内障手術シミュレーター「KITARO」のまぶたに設置する一連の操作を示した。
Smart-Spec を閉じて左右の間隔が狭まったまぶた引っかけ部を Smart-Drape の陥凹部の 2 つのポケットにさし
込み、両者を接合する。この状態で上下のまぶたの間にドレープ陥凹部ポケットをはめ込み、開瞼器を開いて
ゆくと、ドレープ陥凹部はまぶたに引っかけ部と共に開いてまぶたの下方に挿入されてゆく。ドレープ陥凹部
ポケットは全周がシリコーン膜で閉じていて、開瞼器を開くときまぶたや眼球の形に合わせてよく伸びるの
で、まぶたの皮膚やまつげが全周にわたって確実にシリコーン膜でカバーされる。
これにより、手術器具や眼内レンズがまぶたやまつげに直接触れて、それらと共に菌が眼内に持ち込まれる 事がなくなり、術後細菌性眼内炎がより効果的に防止される。
- Pinch the arms of the Smart-Spec until the distance between the left and right hooks is narrow.
- Insert them into the pockets of the Smart-Drape’s recess and join the two devices together.
- While pinched, insert this recess of the eye drape with the retractor’s hooks between the upper and lower eyelids.
- Gently release the Smart-Spec, and the pockets of recess will expand as the retractor is released. It can then be easily inserted below the eyelid.
- The recess of the eye drape that is inserted under the eyelid is covered with a silicon film all around. When the Smart-Spec is opened, the Smart-Drape stretches effortlessly according to the shape of the eyelid and eyeball.
実験装置を使った排水効果の検証
- 排水実験装置を使い Smart -Spec の排水機能を検証した結果を上図に示す。一定のペースで水を垂らした時、 一般のフィルム状ドレープと開瞼器の使用や排水器「ミラクルドレーナ」との組み合わせの時に比べて、SmartDrape と Smart-Spec の組み合わせでは、抜群の排水効果を示していた。
- この Smart-Spec の排水構造と灌流液の間の物理現象(毛細管現象、サイホン効果、等)により術中に使用され る水が効果的に排出され、水溜まりを防止して術野の視認性が向上する。これにより見づらいことで発生する術 中合併症の発生リスクが減少する。また、眼瞼の皮膚や睫毛から出てきた細菌が水と共に排出されて、術後の細 菌性眼内炎の発生リスクをより効果的に抑えることができる。
従来の瞳孔拡張器の問題点
従来の瞳孔拡張器
- 瞳孔が薬で拡張しない小瞳孔の症例に対しては、以前には瞳孔縁に多くの放射状切開を入れたり、瞳孔をハサ ミで大きく切開して後で縫合するなどの方法が行われていたが、時間のかかる手術侵襲の強いものであった。
- この問題を解決するために、虹彩リトタクターが開発された。この器具の設置は、角膜に 4 カ所の小切開を作 り、それぞれに虹彩リトタクターを挿入する。そして、瞳孔縁に先端のフックを引っかけて手前に引っ張り、こ の状態でシリコーンストッパーを角膜に押しつけて固定する。これは相当の労力と時間を必要とするものであっ た。またフック部が細い樹脂製のワイヤーでできているため、フックによって瞳孔縁を拡張する際に瞳孔縁が裂 け、術後に瞳孔の変形を残してしまうことがあり問題視されていた。
- これに対して、上記の虹彩リトタクターよりも簡単でかつ短時間に瞳孔を拡張させるものとして、多くのリン グ状瞳孔拡張器が開発された。これらの瞳孔拡張器は、自然な状態では四角形か円形のリング状のものであり、 折り畳んで専用のインジェクターで眼内に挿入した後、リングの外側にある溝で瞳孔縁の内側から引っかけなが ら瞳孔を外側に拡張するものである。
従来の瞳孔拡張器の設置
- しかしながら、これらの瞳孔拡張器は、形状記憶性が高い素材で作られているため、インジェクターから眼内 に放出されると眼内で 6~9 ㎜程度の直径を有する四角形~円形に拡大したオリジナルの形状に戻る。製品を瞳孔 縁に引っかけようとすると、大きく開いた形状のまま製品を大きく移動させなければならない事になり、角膜内 面に接触して傷つけてしまったり、虹彩を強く伸展・圧縮させて虹彩組織にダメージを与え易いものであった。
- また、これらの瞳孔拡張器は、直径 3 ㎜以下の小さい瞳孔への設置に関しては、さらにその設置が困難な作業 となる。
- フックで虹彩把持部を動かした時、虹彩が大きく伸展・圧縮され、製品が眼球内壁に強くあたっている。
MIRAI EYE の瞳孔拡張器による解決策
MIRAI EYE Smart-Ring
- Smart-Ring は、リング部と 4 つの虹彩把持部から成り、リング部は 内方に窪む部分と外方に膨らむ部分がそれぞれ交互に設けられ、内方 に窪むリング部中央に虹彩把持部が設けられている。
- 。また、虹彩把持 部は、その両脇リング部にヒンジがある。
- これらの構造により、虹彩 把持部が内方に動きやすい事を特徴とする。
Smart-Ring を設置する模式図
Smart-Ring の挿入と設置
- 方法2:インサーターで挿入しながら先行する2つの虹彩把持部を対側の虹彩縁に設置。
- で残りの2つを捉えて1つづつ手前の眼孔縁に設置。
- Smart-Ring を専用のインサーターを使って Smart-Ring を前房内に挿入し、フックを使って虹彩に設置する。 虹彩把持部をフックで内側に動かす時、リング全体が大きく動くことなく虹彩把持部のあるリング部は内方に 容易に窪む。そのため、虹彩を大きく伸展圧縮させることなく容易に虹彩把持部を瞳孔縁に設置することができ る。 また、インサーターの前房からの抜去は、スライドボタンを横に向けてプッシュプルフックを横にして、フッ クをリングの下と創口を通過させて行う。こうする事で、Smart-Spec を押し出したプッシュプルフックがリング や創に引っ掛かることなく、安全かつ容易にインサーターを抜去できる。
Retrieval of the Smart-Ring
- Smart-Ring の眼内からの回収は、瞳孔縁に虹彩把持部を設置したままで行う。 推奨する Smart-Ring の前房からの回収の方法は、インサーターパイプを前房内に挿入後、スライドボタンを右 横に向け、フックを横にしてスライドボタンを押してフックをリングの下に通し、スライドボタンを上に向け、 フックを縦にしてリングを引っ掛け、スライドボタンを引いて Smart-Ring をインサーターパイプの中に引き込ん で行う。
- このように、フックを縦にしてリングを引っ掛け、フックを横にしてリングの下や創口を通すことで、スムー ズかつスピーディーにインサーターの前方からの抜去やリングの回収を行うことができる。